顎を広げて歯をきれいに並べる床矯正
歯並びの乱れの大きな原因である「スペースの不足」を適切な顎の発達で解消することで、歯並びの改善を目指します。
顎が自然に発達する力を利用した治療ですので、対象は3~10歳くらいのお子さまとなります。
床矯正で治療可能な歯並び
床矯正での治療が可能なのは、主に以下の歯並びのタイプです。
すきっ歯などを除く、ほとんどのタイプで治療の効果が期待できます。
叢生
いわゆる、歯列がガタガタ・デコボコしている状態です。
乱杭歯とも呼ばれます。
上顎前突
上の前歯が、大きく前方に突き出したタイプです。
出っ歯とも呼ばれます。
下顎前突
下の前歯が、上の前歯より前方に位置するタイプです。
受け口、反対咬合とも呼ばれます。
開咬
奥歯を噛んだとき、上の前歯と下の前歯のあいだに、垂直方向の隙間ができるタイプです。
食べ物を噛み切ることが難しくなります。
過蓋咬合
上の歯歯列が、下の歯列に大きく被さっている状態です。
下の歯がほとんど見えなくなるケースもあります。
交叉咬合
上の歯は、下の歯に少し被さっているのが通常です。交叉咬合では、歯列のどこかで咬み合わせが逆になっています。
床矯正のメリット・デメリット
メリット
将来的な矯正治療が不要になる、簡単になる可能性が高くなる
床矯正で必要なスペースを確保しておくことで、将来的な本格的な矯正治療が不要になったり、治療期間が短くて済んだりといったことが期待できます。
食事・歯磨きの際のストレスがない
床矯正装置は、患者様ご自身での取り外しが可能です。そのため、食事・歯磨きの際には取り外していただけます。食べ物が詰まる・食べにくい、磨きにくいということはありません。
ワイヤー矯正よりも痛みが少ない
ブラケットとワイヤーを使った「ワイヤー矯正」のように、歯に力をかけて動かす治療ではありません。そのため、比較的痛みが抑えられます。
抜歯が必要になるケースが少ない
床矯正では、基本的に抜歯は不要です。また将来的に本格的な矯正治療を行う場合にも、床矯正でスペースが確保されているため、非抜歯で対応できることが多くなります。
トータルでの料金が抑えられる
大人になってから初めてワイヤー矯正やマウスピース矯正を行う場合と比べると、子どものうちに床矯正を済ませておく方が、トータルでの医療費が抑えられる可能性が高くなります。
デメリット
お子さまの意欲、保護者様のサポートが必要
床矯正装置は、取り外しが可能です。そのため、お子さまご本人にはある程度の治療に対する意欲が必要です。また、ご家庭での装置の管理という意味では、保護者様のサポートも欠かせません。
歯の位置を細かく調整することはできない
床矯正は、顎を適切に広げ、スペースを確保する治療です。ワイヤー矯正のように、歯の1本1本の位置を細かく調整することはできません。
1日14時間以上の装着が必要
毎日14時間以上の装着は必須です。ただ、就寝時間も含まれるため、やはり固定式の装置と比べるとご負担は少なくなります。
床矯正Q&A
床矯正は、顎が自然に発達する力を利用した治療です。そのため、対象となるのは3~10歳くらいのお子さまです。
治療を開始するタイミングは症例によって異なりますが、6~8歳頃から開始することが多くなります。
これも症例により異なりますが、1~2年を目安にお考えください。
正しく装置を使用すること、歯科医師や保護者様が正しく管理することが、治療期間を長くしないポイントとなります。
装置破損の原因となりますので、食事、歯磨きの際には取り外してください。
ただこれはデメリットというよりも、メリットと捉えられます。食べ物が詰まる・食べにくい・磨きにくいということがありませんので、お子さまのストレスが軽減されます。
「顎を広げる」という言葉を繰り返し使用してきましたが、ここでの顎とは「歯槽骨(歯の生える場所の骨)」のことです。
床矯正によって、顔が大きくなるということはありません。一方で、顎を中心とした顔貌の左右差、歪みはその改善・解消が期待できます。